「ダーニング」は、イギリス発祥でヨーロッパを中心に伝統的におこなわれてきた、衣服の穴やほつれを修繕するための針仕事。穴をカモフラージュすることも、可愛くおしゃれに“魅せる”補修を施すこともできるので、理想的なデザインで繕うことができます。自分でリペアして生まれ変わった衣服は愛着もひとしお! 秋の夜長の自分時間に、ぜひトライしてみて。

ダーニングとは?

“ダーニング=darning”の“darn”という単語には、〈靴下・編み物など(の穴・ほころび)を〉かがる、繕うという意味がありますが、一般的に“ダーニング”というと、ヨーロッパで古くからおこなわれてきた針仕事を指します。針と糸を使って穴が空いて使えなくなった衣服を補修する手法です。
ダーニングにはさまざまなステッチがありますが、1番よく知られているのが、布を織るように縦糸と横糸を交互に掛けていく「バスケットダーニング」です。
補修する衣服と同じ色の糸を使えば布地に馴染ませることができますが、好きな色の糸を使って、あえてデザインや模様のように目立たせるのも人気。作家さんをはじめ、たくさんの人が思い思いのカラー、デザインでダーニングを楽しんでいます。生まれ変わった衣服は、手間をかけた分、可愛さと愛しさが倍増します。
私は、現在小学4年生の娘が幼稚園児だった頃にダーニングに出会いました。毎日転んでタイツを破って帰ってくるため、何かよい方法はないかと探していたところ、ダーニングというものを知りました。今では、子どもが服に穴をあけて帰ってくると、ニヤリとしてしまいます。
糸の太さや種類を変えれば、ニットやデニムなど、どんなアイテムもお直しができます。さらに、穴やほつれ以外にも漂白剤をとばしてできた白抜けや、どんな手を使っても落とせない墨汁のシミなども隠せて便利ですよ。
ダーニングに必要なもの

必要なものは、「ダーニングマッシュルーム」という生地の下に敷くもの、そのマッシュルームに布を固定するためのゴム、そして針、糸や毛糸です。
ダーニングマッシュルーム
傘の丸く平らな部分に繕う部分を当てることで縫いやすくなります。傘と柄の部分を切り離せるタイプもあり、机やテーブルに固定しながら、または手で持ちながら作業することができます。
ダーニングは、ほぼすべてのツールを100円ショップで揃えることができますが、このマッシュルームだけは100円ショップにはありません……。しかしながら、丸く平らな面があるものであれば代用することができます。おたまやガチャガチャのカプセルなどで代用する人も多く、私もはじめは木製のおままごとセットの桃を使っていました。
ゴム
ゴムはヘアゴム、輪ゴムなど、布をマッシュルームに固定できるものなら、なんでも構いません。
針
使用する糸が通れば、家にあるどんな針でも大丈夫ですが、ニットや靴下であれば毛糸用のとじ針、洋服やデニムであればクロステッチ針や刺しゅう針、刺し子針などがおすすめです。
とじ針は毛糸を割ってしまわないよう針先が丸くなっているものが多いです。クロステッチ針も、格子状に穴が空いた専用の布地に針を刺すため、穴以外の部分を刺してしまわないよう針先は丸くなっています。このように、針先がとがっていない針の方が、糸を割りにくいので、ダーニングにはむいています。しかしながら、針先がとがっている針であってもやり方次第では問題なくできるので、わざわざ新調する必要はありません。
糸または毛糸
セーターを修繕する場合は毛糸、デニムであれば刺し子糸など、布地に合わせて最適な糸を選ぶとよいでしょう。ダーニングの専用糸もありますが、家にあるお好みの糸を使用すればOKです。
初めてで何を買えばよいか分からないという人は、刺しゅう糸の中では最もメジャーな25番刺しゅう糸がおすすめ。100円ショップでも色々なカラーがセットになったものが売られています。
25番刺しゅう糸は、糸が6本まとめられてひとつの束になっているので、布の厚さに合わせて糸を何本取るか決めることができます。
基本的なダーニングの手順
今回、針はダーニング専用のもの、糸は25番刺しゅう糸を3本取りして使用しています。
縦糸を渡したあとに、機織り機のように横糸を交差させながら渡していきます。繰り返しの作業なので1度覚えてしまえば、裁縫初心者や不器用さんでもコツを掴んでいくはずですよ。
穴のまわりを1周返し縫い

離れた場所から針を刺し、穴付近へ通します。そこから、穴の周りの3mmほど外側をぐるっと一周返し縫いをします。糸は最後に処理するので、10cmほど残しておいて。

穴の周囲に返し縫いをするのは、どこまで修繕して隠せばよいのかの目印にするだけでなく、これ以上穴が大きくなるのを防ぐ目的もあります。

1周したら、縦糸のスタート地点となる右上に針を刺します。
返し縫いが苦手な人は、最初のひと目だけを返し縫いにして、あとは並縫いでもOK。または、この工程はまるっと飛ばして、縦糸を渡すところからはじめても大丈夫です。
縦糸を渡す

右上のスタート地点からまっすぐ下に針をおろし、布地を1~2mmほどすくい取ります。

今度はそこから上に針を運び、同じように布地を1~2mmほどすくい取ります。

この作業を繰り返します。あらかじめ、針を刺す部分にチャコペンでラインを取っておくと、仕上がりがきれいな四角形になりますよ。

左下までいくとこのような感じ。この際、無理に隙間なく埋めようとしなくてもOKです。使用する糸の幅分の隙間を開けていくと、ギチギチにならずきれいに仕上がります。最後は、はじまりと同じく離れた場所に針を刺し、糸を10cmほど残してカットします。
横糸を渡す

横糸も離れた場所から針を刺して、スタート地点の右上に通します。糸はそのほかの糸端と同じように10cmほど残します。

縦糸を1本おきにすくいます。最後は縦糸と同じように布地を1〜2㎜ほどすくい取って折り返します。

2列目は、1列目にすくわなかった縦糸を1本おきにすくいます。針先がとがった針を使う場合は、写真のように針穴の方から進むと、糸を割らずに縦糸をすくうことができます。

2列目も端まで横糸を渡したら、布地を1〜2mmほどすくい取ってまた折り返します。

写真のように、横糸を渡しながら針全体を使って横糸を上へグッと押し上げるときれいに隙間が埋まっていきます。

また、このように針先で隙間を微調整しながら進めていくのもきれいに仕上げるコツです。ちなみに、横糸を渡す際は、自分のやりやすいようにマッシュルームの向きを変えるとスムーズにいきます。

横糸を最後まで渡したら、渡し終わりの場所に針を刺して離れた場所へ通し、糸を10cmほど残してカットします。
糸の処理をする

裏返して、表に出ている糸端を引っ張り出します。

出した糸を針に通して、縫い目に4~5針くぐらせてカットすれば完成!

この作業が面倒な人は、玉結びをしたり、近くの糸同士を固結びにするなど、お好きな処理の仕方でOK。
完成!

少々糸を強く引っ張りすぎて、布地が引っ張られてしまったのが反省点です……。

とはいえ、タイツなので履いてしまえばそんなことも気になりません◎!
ダーニングに細かな決まりごとやルールはなし!

ダーニングに細かな決まり事などはありません。もちろん四角に限らず、丸や三角形、リボンの形などなんでもアリ!

また、このように補修箇所の前後に返し縫いをプラスすれば、薄くなった布地の補強にもなります。工程が増えて大変そうに見えるかもしれませんが、返し縫いをしていると糸が緩んでくるという心配がなく、作業がしやすくなるというメリットもあります。
糸が足りなくなったタイミングで色を変えたり、ラメ入りの糸を挟んだり、グラデーションになった糸を使うのもおすすめ。思いもよらない素敵な作品ができたりするたびに、きっとダーニングの魅力にはまっていくはずです!
まとめ
文/渡邊倫子